健康情報
2021.04.09補中益気湯について
漢方に様々な種類が存在しますが、免疫力を向上してくれる漢方と言えば「補中益気湯(ホチュウエッキトウ)」ではないでしょうか。免疫力アップを通して、コロナ時代を健康な身体で乗り切りましょう。
補中益気湯の構成生薬
補中益気湯は主に10種類の生薬から成り立っています。
・人参(ニンジン)・・・体力の低下した全身倦怠感、食欲不振を訴える人の滋養強壮などに用いられます。
・黄耆(オウギ)・・・免疫機能を高め、全身の機能を高める効果があります。その他、ガンの予防、ストレスが多い人にも効果があります。
・蒼朮(ソウジュツ)・・・水分代謝を盛んにして、健胃整腸、利尿、発汗作用を持ちます。
・柴胡(サイコ)・・・解熱、解毒、鎮痛、消炎薬として作用します。
・当帰(トウキ)・・・鎮痛、鎮静、強壮などに効果があります。婦人病にも多く用います。
・升麻(ショウマ)・・・解熱、発汗、解毒作用があり、じんましんの初期症状などに効果があります。皮膚の化膿性疾患に用います。
・陳皮(チンピ)・・・健胃(胃の機能の促進)、去痰、理気の効能があり、消化不良、食欲不振などの胃部不快感を取り除くのに用いられています。
・生姜(ショウキョウ)・・・健胃、食欲増進、発汗などに効果があります。
・大棗(タイソウ)・・・強壮、利尿作用、食欲不振、不眠、咳、動悸、腹痛を伴う症状に効果があるとされている。精神安定作用。他薬の作用を調和・緩和させる効果もあります。
・甘草(カンゾウ)・・・咳止め、抗潰瘍、抗アレルギー、抗炎症、免疫機能、肝機能を高めてその解毒作用やがん予防効果、利尿作用があります。
これらを組み合わせることで漢方薬としての効能を作り出していきます。一つずつでは意味がなくなってしまうので注意です。
参考画像
補中益気湯の薬効薬理
①免疫機能低下の改善作用
慢性疾患あるいは感染症が遷延し体力が低下した患者に投与したところ、血液中のnatural killer(NK)細胞活性が上昇した(n=35)。
②感染時の体力低下に対する作用
プレドニゾロン誘発免疫抑制C.albicans感染マウスに経口投与したところ、生存期間が延長した。
MMC免疫抑制単純ヘルペスウィルスI型(HSV-1)感染マウスに経口投与したところ、生存期間が延長した。
③担癌状態の生体防御機構の修復
マウスに経口投与したところ、2次Meth Aに対する抗腫瘍免疫が獲得され腫瘍の増殖が抑制された。
④抗癌剤による免疫低下に対する作用
マウスに経口投与したところ、MMCにより低下したNK活性及び骨髄機能が回復した。
⑤慢性疲労に対する効果
慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome)モデルマウスにおいて、低下した運動量を改善した。
⑥高齢者の体力低下に対する作用
老齢マウスに経口投与したところ、低下したT細胞数、NK細胞数及びヒツジ赤血球(SRBC)抗原に対する抗体産生が回復した。
⑦食欲不振に対する作用
Colon26-L20腺癌誘発悪液質モデルマウスに混餌投与したところ、体重、摂餌量、飲水量、腓腹筋量および精巣周囲脂肪重量の減少ならびに中性脂肪の低下が抑制された。
⑧感冒に対する作用
インフルエンザ感染マウスに経口前投与したところ、生存期間が延長した。
⑨精巣に対する作用
マウスにドキソルビシンと同時並びに前後14週間継続混餌投与したところ、精巣重量の低下が抑制された。
マウスに経口投与したところ、アドリアマイシンによる精巣重量減少が抑制された。
※ツムラ補中益気湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用・改訂
上記のようにこの漢方は疲労やストレスなどで弱った体を、細胞から強くしていきます。つまり 免疫力の向上とともに、体を芯から元気づけてくれる漢方ということになりますね。
補中益気湯の注意事項
漢方においても注意事項があります。その一つは副作用です。
間質性肺炎 、 発熱 、 咳嗽 、 呼吸困難 、 肺音異常 、 捻髪音 、 偽アルドステロン症 、 低カリウム血症 、 血圧上昇 、 ナトリウム貯留
めったに起こることはありませんが、服用量が多すぎたり、各生薬にアレルギーがある方では上記のような副作用が発生してしまうので注意しましょう。年齢、体重、症状により適宜増減することが大切です。
また、下記の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。
(1)医師の治療を受けている人
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人
(3)今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人
まとめ
補中益気湯は有用な漢方薬ですが、治療の効果判断には1ヶ月を目安に服用してみるといいでしょう。予防として日々服用することも可能です。ただし、服用後に効果が感じられなかったり、むしろ不調が現れる場合はすぐに服用を中止してください。そして、医師または薬剤師に相談してみてください。
市販の漢方と医療用漢方では生薬の処方量が異なる場合がありますのでご注意ください。